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ギルバートコレクション、その他の短編

今日から六本木の富士フイルムスクエアで開催されるギルバートコレクション展を見てきました。 写真家の名前を見ただけでも震えがくる、ずらっと戦国武将が並んでいるみたいな、教科書級の豪華さ。それが無料というのに驚きます。 今でこそグルスキーやシンディ・シャーマンなど億の単位で写真が売買されるけれど、ちょっと前まではアンセル・アダムスの「ヘルナンデスの月」が数千万円でいちばん高かった時期もあります。 その世界でいちばん高かった写真が、すべてを捨てて持って逃げちゃおうかな、と思わせるくらい、身近なところに飾ってありました。 こういったコレクションでは、それぞれの作家のベスト作品が集められているわけではないため、作家ごとの違いが際立ちにくいこともあるのに、よい写真が揃っていて見応えあります。 印象派みたいな、写真には作風による派閥がないけれど、そのなかでも稀有な例がグループf64の作家たちで、そこをまとめて見られるのも価値が高いと思います。 音質と画質は、じつは半世紀前には最高レベルに達していて、そのあとは簡便さや小型化の歴史なのだと言われることもあり、いまだに音が良いレコードといったら「Kind of blue」で、画質がいい写真といったらアンセル・アダムスだけに、プリントの美しさは絶品。 美しく見えるから写真に撮られる現実と、写真に撮られるから美しく見える現実との差はわずかだ、とイタリアの作家カルヴィーノは書いていて、そのわずかな差をどれくらい拡大させることができるかが、この時代の写真家たちの試みのひとつ。 スティーグリッツから年譜が始まっていることでわかるように、すでに近代の幕は開い

B&O再襲撃

まだペンタックスが赤坂にあった頃だから三年くらい前に、早く着きすぎて時間を潰すのにバング&オルフセンのショールームに入ったら、接客をしてくれた人が「うちのお客様たちは、電源ケーブルの醜さを避けるため、壁に穴を空けるなどの施工をしてオーディオ機器をセッティングしているのです」と話していて、B&O買うなら人生から変えなきゃダメなんだなと店を後にしました。 日本橋に行く用事があり、「そうだ、髙島屋の新館にB&Oのショールームができたってニュースで見たぞ」と思い立ち、寄ってみました。 デパートのなかだけれど、インテリアなど見事に統一された美しい空間で、奥にあるリスニングスペースに案内してくれました。 普段はどのような音楽を好まれますか、と聞かれたので、なんでも聞きますからリファレンスでいいです、と答えると、最初に流してくれたのはダイアナ・クロールの「Desperade」で、ちょっと笑っちゃいました。万年筆で”永”と書くみたいな。ノラ・ジョーンズか、どっちかだと思った。 でもすごく音は良くて、「ここはリスニングスペースとして、あえて良すぎる環境にはしていません。それは全てのお客様がそのような空間を設営できるとは限らないからです。右はガラス、左は塗装の壁で、反響を考えれば改善点はたくさんあります。でもそれをこのスピーカーはコントロールできるシステムになっておるのです」だって。響きを検知して反響音を抑えることができるらしい。 値段を聞いたらペアで500万円で、「ううっ、さ、さすがにフラッグシップですね」と言うと、「当社では二番目のラインでして、最上位はあちらになります」だって。 相原正明さん

パリ残像 精読

【木村伊兵衛「パリ残像」精読】 2018/11/05 最初に見た印象は、歴史的な事実として知っていたことを、その現地に赴いて初めて実際に目で見たという感覚でした。 ゴダールの映画などで見ていた50年代のパリを、スナップを得意にしていた日本の写真家が初めての渡航先として選び、憧れの眼差しをもって捉えた写真たちで、すでに写真集で何度も見ていたけれど、その知識と事実が重なる瞬間。例えるなら、生きて歩いているフランツ・フェルディナンドを見るよう。あれ、ぼくはこれから起こることを知っているぞ、と。 木村伊兵衛さんの写真の記憶と、50年代のパリについての知識と、それらが合致して共鳴しました。 その写真集は、初めての僕の個展にきてくださったお客さんが、「私はもう十分に見たから、これからはお兄ちゃんみたいな人が持っていたら、何度だって見られるからさ」と言い、ぼくにくれたものです。過去から託された思いがそこにはあった。 この写真展を推薦しておいた友達から、「すごく良かったから、絶対に見るといいよ」と連絡があり、やれやれ、と思いました。嬉しかったけど。 最後にクイズが添えてあって、「木村伊兵衛さんの肖像をある有名な写真家が撮っていて、最後の写真になっています。誰でしょう?」だって(笑) 街を案内してくれたのはドアノーで、アッジェなどとも親交を深めたけれど、写真としては何と言ってもブレッソン。それはもうブレッソン。 写真を撮られることを極端に嫌ったブレッソンを、さりげなくスナップしたことは木村伊兵衛さんの有名なエピソードになっているけれど、カウンターパンチみたいにブレッソンが撮った木村伊兵衛

Knives Out

いよいよ明日が講演なので、資料の最終チェックをしながら、「そうだ! 昨年の感想文をもらっていたんだ」と思い立ち、生徒たちが書いてくれたアンケートのコピーを取り出してきました。 他県はわからないですが、岐阜県は二年続けて同じ講師が担当することになっていて、違いがわかったり、感想を活かせたりするのが良いところ。 ただ、生徒の半分は同じだから、「また同じこと話してるよ」と思われるかもしれないのは、少し困るところ。 また来年も来てください、写真の楽しさに目覚めました、とか泣かせる言葉のなかに、「私たちがわかりやすいように、笑いやクイズを交えながら面白く語ってくださったのが嬉しかった」と書いてあり、大人だなあ・・・と感心しました。 ぼくの高校にもオリンピックのメダリストや有名演奏家など来てくれたけれど、一瞬でもその人の気持ちになって考えたことなかったです。なんでバッハのバイオリン協奏曲を選んだのかな、とか。 感想のなかで多かったのは 「カメラというのは、写真だけでなく日常にも変化があることがわかってよかった」 「写真の歴史を教わって価値の変化なども知れて、奥が深いことを知りました。自分の写真に生かしたい」 「同じ対象でも撮り方を変えるだけで、気持ちの違いを写すことができると知って興味深かった」 の三つ。講師として最高に嬉しいコメントです。 とくに写真の歴史については、「私たちが何気なくやっていることでも、最初にやった人がいて、今があるんだと思いました」という素晴らしい感想がありました。 いつも思うけれど、写真は古典作品に触れる機会が少なく、新しいものをどんどん消費していくサイ

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