どこよりも遅いX Summit 2019レポ

最初に思ったのが「えっ、渋谷?」という意外な場所のチョイス。渋谷っていうとシグマかリコーのイメージです。

でも、もともと富士フイルムは西麻布にあり、仕事で呼んでもらうと渋谷で降りて、明治通りを抜けて表参道を下り、246をちょっとだけ歩いて骨董通りを・・・というのがお決まりのコースでした。

いつかお金に余裕ができたらJM.Westonは無理でもParaboot買えたらいいなあ、なんてこと考えながら。

だから渋谷を選んだのも不思議なことではないけれど、これまでX関連で渋谷のイベントというと、X-Pro1のローンチを東急Bunkamuraの裏でやった以来じゃないでしょうか。あれ、いろんな意味で伝説だな。

久しぶりに明治通り歩いたら、アウトドア系のショップが並んでいるんですね。ノースフェイスはともかくホグロフスの路面店なんてあるの知らなかった。 昔はここにスラップショットというセレクトショップがあって、スナップを撮った帰りに寄ったら店員さんに「カッコいいカメラですね。写真って楽しそうでいいなあ」と言われて嬉しかったんだよなあ・・・とか、すっかりおじいちゃん気分。

サミットというだけあって、海外からバート(ベルギー)とトーマス(ポーランド)が呼ばれていました。 作品紹介のときにトーマスが「自分はマルセル・プルーストの『New Eyes』という考えが好きで、写真でそれができたらって考えているんだ」と話していたのが印象的でした。トーマスのトークショーは頭と終わりが引用になっていることが多く、とても好きです。

バートも「新しい物の見方を提案したいと思っていて、そのためいつもチャレンジをしているよ」と話していました。

日本だとスナップ(ストリートフォト)は、「こんなものがありました」と現実をイメージに置き換えてシェアする感覚が強いと思うのだけれど、この二人の考えは僕がここのところずっと繰り返している「突き詰めれば写真とは、パースペクティブ=ここから見たら世界は美しい、という提案なんだ」という主張ともぴったり合致して嬉しかったです。 渋谷の印象を聞かれていて、トーマスは「アニメで日本に恋をして、あとは映画『ロスト・イン・トランスレーション』とか・・・」と言っていました。アレック・ソスも来日したとき、ホテルに籠ってこの映画のオマージュを撮っていたので、海外の写真家はこの映画を通して日本を見ているところがあるのかもしれません。

たしかMy Bloody Valentineの「Sometimes」をBGMに、スカーレット・ヨハンソンがタクシーの窓から夜の渋谷を見る美しい場面があったと思います。もう15年くらい前の映画なのに、いまだに影響力を持ち続けている。

開発発表の目玉は三つ

まずはF1.0のレンズ。 当初は30mmで設計していたけれどサイズの問題があって1kg以下にはできなくて、50mmF1.0になるとのこと。これはとてもいいですね。大口径の使い道としてポートレートも考えられるから、ずっと応用範囲が広がるはず。

次がファームウェアに関する新機能で、HDR合成やフォーカスブラケット、あとは多重露出の枚数が9枚まで増えたそう。 これは使ってみないことにはわかりません。初めて搭載される機能じゃないから、使い勝手や仕上がりで他社とどれくらい違いがあるか楽しみ。

でもなんといっても目玉はX-Pro3

3にちなんで、トピックを三つ挙げるなら

1.外装にチタンを採用。 チタンは加工が難しいもののメリットも多い素材で、カメラでは使われなくなって久しいけれど、まだ扱える工場を見つけたみたいです。 耐食性はあっても傷に弱いため、硬化処理をしてサファイア並みになっているとか。

2.LCDが通常時は格納されていて見えない。 でも180℃のチルトが可能で、裏蓋には撮影情報やフィルムパッケージを表示できる(しかもバッテリーオフでも見られる)。実際に使ってみたとき、実用性と趣味性と、どっちに働きかけるのか興味あります。

3.新フィルムシミュレーションのクラシックネガ。 ちょっと懐かしい感じがするネガフィルム(見た感じは90年ごろのアルバムにあるような写真っぽかった)をシミュレーションしたモードが搭載される。

の三点でしょうか。

僕にとってXの最高傑作はX-Pro2で、それは精神性と機能のバランスが取れていて、これより高性能なカメラがいつか発売されるだろうけれど、X-Pro2の価値は不変だなと思えるから。さらに付け加えれば、これだけはライバルがいないから。

X-Pro3はそれを超えるのか楽しみです。

高性能になったのは間違いないけれど、「いろいろ文句は言いたいのに、X-Pro1は手放せないんだよ」という人がいまだに多くいることから、デジタルカメラとしては稀有なことだけれどスペック以外のことに魅力を感じている人も多いのでしょう。

Xがスタートしてもうすぐ10年。写真との関わり方まで再構築するようなカメラになってくれることを期待しています。

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